経営に必要とされる資源は、「人、物、金、情報」と言われるが、中小企業にはそれらの経営資源が不足している場合が多い。また地方の中小企業においては、地元マーケット規模は小さく、自社製品の販売先が不足していることもある。
地元企業の発展を支援し、地域産業の振興に貢献するということは地方自治体に求められることでもあるが、地方自治体の中では、首都圏の民間企業に委託して地元中小企業の販売先を開拓しようとする例も見られる。その一例として私が
関わった、地方自治体と地方中小企業、民間企業の連携による地域産業振興の例を紹介したい。
1.連携の仕組み
前述の通り地方の中小企業には、技術力や開発力があり、すばらしい商材を持っているにも関わらず、営業人員が不足しているため効果的なアプローチができず、販売先を開拓できていない企業が存在する。また営業基盤がなかったり、コ
ストがかかったりするという理由で首都圏に進出できないといった企業もある。そのような企業の商材を、地方自治体が推奨し首都圏の民間企業に販路開拓を委託するという仕組みである。
商材は何でも良いということではなく、地方自治体と委託された民間企業で商材の市場性評価と当該企業の評価を行い、「この商品は売れる」と判断した商材のみがピックアップされることになり、委託民間企業は売上目標を設定してその商
材を首都圏で販売することになる。
所謂「セールスレップ(営業代行)事業」と言われるものであり、地方自治体に委託された首都圏民間企業が営業代行の人間を雇用して、地方中小企業の商材の販路を開拓するのである。
私の関わったケースでは、今年の3月で終了するまでに2年間で38社の商材の販路開拓を行い、売上実績も約2億円を計上することができ、ある程度の成果を収めたのではないかと考える。
2.成功要因
38社すべての商材について成功したとは言えないが、前述の数字を計上できたことの要因としては、以下のことが考えられる。
(1)密接な連携
当然のことであるが、地方自治体・地元中小企業・委託民間企業・セールスレップ相互の密接な連携が不可欠である。特に地方自治体主催による関係者の連絡会開催によって、現場の進捗を関係者が共有化できたことが大きな要因である。
(2)常勤セールスレップの雇用
委託された民間企業は報酬(固定給)を支払い、常勤のセールスレップを雇用してセールスレップ事業に専念させた。この場合は、地方自治体が委託企業に対して委託費を支払うことによって、セールスレップへの報酬(固定給)とし、セールスレップの生活(費)の確保とモチベーションの維持、更には責任感の高揚に努めた。
(3)人間関係の構築
「やる気」のある中小企業は、地方自治体やセールスレップに密接にアプローチを行い、人間関係の構築に努めていた。またセールスレップ側も中小企業の経営者や、担当者と顔と顔を合わせながら商談を行うことによって信頼関係を構築し
ていた。基本的なことではあるが、供給する側と販売する側の人間関係が、このような場合でも重要な要素であると再認識させられた。
3.今後への提言
今後、前述のような仕組みで地域産業振興を行う場合の留意点を提言する。
(1)更なる企業・商材の精査
参加した中小企業の中には、「付き合いで登録した」というような企業も見られた。そのような企業は、委託企業やセールスレップと積極的な協力体制を構築することはなかったと言える。そのため、セールスレップ事業に参加する中小企業の「意志」や「やる気」をもっと厳密に精査する必要がある。
(2)適切な目標の設置
進捗の管理においては密接な連携がとれていたのであるが、目標値(売上目標)の設定の段階で、地方自治体・地元中小企業・委託民間企業・セールレップのコンセンサスをとらなければならない。市場規模や商材の性質などによっては、販
路を開拓しやすい商材とそうではない商材が見られる。そのため目標値の設定においては、企業・商材の強み・弱み、外部環境を分析し、商材ごとのマーケティングプランを綿密に立案する必要がある。
(3)人財の確保
まだまだ「セールレップ」という職種は一般的に馴染みが薄いため、人員の確保が難しいというのが現状である。特定の商材の最適な人財を雇用するということは困難である。そのため、人財の確保においても地方自治体と民間企業が一体
となって告知・募集を行っていく必要が感じられる。
いずれにせよ、地方自治体は、これから地域産業振興の方策として様々な支援を行うであろうが、効果的な方策を立案するためには地域企業の生の声を聞き、どのような方策が最も効果的なのかを判断する政策立案能力が求められると考える。